何か特定の物質が含まれるものを飲んだり食べたり、あるいは臭いをかいだりなどで身体にとりこまれて(暴露)頭痛を引き起こす場合は結構あります。たとえばチョコレートだったり芳香剤だったりと経験のある人は多いのではないでしょうか。また、特定の物質を取ってからすぐに頭痛が起こる(即時型)とゆっくりと起こってくる起こってくる(遅延型)があります。逆に、知らないうちにいつものように飲んだり食べたりが続いていて、それを急にやめてしまったこと(離脱)で起こる頭痛もあります。今回はこの頭痛について説明いたします。
基本的には原因となる物質に関わらない、ことになりますが、MOHのように摂取することが習慣的になっている場合は中枢性感作という状態が関係しているために離脱するための治療が必要となります。
物質の使用または暴露による頭痛
一酸化窒素供与体誘発頭痛
心臓の病気で特に狭心症などの血管が縮まる病気に対して使う薬です。一酸化窒素に血管を広げる作用があるためです。しかし、体中の血管に影響があることもあり頭痛を引き起こすことがよく知られています。通常はしばらく飲み続けていると慣れてくるので頭痛がしなくなってきます。多くの場合で内服してから一時間くらいで頭痛がする即時型なのですが、時々内服してからしばらくして痛くなる遅延型の人もいます。薬を飲んだ後に頭痛がしてくる場合はどれくらい時間がたってから出てくるのかも気にしていただきたいです。
ホスホジエステラーゼ阻害薬誘発頭痛
この薬も血管に作用して広げる傾向があり、心筋梗塞を起こしたことのある人に処方されることが多いです。他にはEDの治療にも使われていることがあります。
一酸化炭素誘発頭痛
不完全燃焼などで発生した一酸化炭素を吸い込むことで発生します。一酸化炭素中毒がひどくなると命にかかわることから非常に気を付けていただきたい状態です。一酸化炭素を吸い込むと赤血球内にある血色素のヘムと酸素よりも結びつき易いことから、効率よく身体中へ酸素を運ぶことが出来なくなり全身が酸欠の状態になります。この一酸化炭素が結びついた血色素の量により危険な度合いが決まってきます。一酸化炭素と結びついた血色素量が10~20%であれば吐き気などの胃腸症状や軽度の頭痛が発生します。20~30% になると中等度の拍動性頭30~40%になると悪心・嘔吐や視覚以上を伴う重度の拍動性頭痛が発生するとされます。なお、40%を超えると意識がもうろうとして、命が危険な状態となってきます。
アルコール誘発頭痛
飲酒によって引き起こされる頭痛ですが、飲むお酒の種類や量により頭痛の出方が違います。飲み過ぎに引き起こされる頭痛については身体の正常な反応であることなので、
種類による違いとしては赤ワインに多く含まれるポリフェノールの影響だったりすること
アルコールによるものにも分類では即時型と遅延型があります。これはわかり易く分けると飲んですぐに頭痛が起こるもの(~3時間)と飲酒後5~12時間後に頭痛がする二日酔いの頭痛に分かれます。二日酔いの頭痛は拍動性で両側性で身体を動かすとひどくなるのが特徴です。経験のある人もいるのではないでしょう。この頭痛は時間が経つと頭痛は消失してきますが、飲み過ぎないようにするのが良さそうですね。
コカイン誘発頭痛
麻薬として知られるコカインですが、麻酔薬として使用されることがあるうえ、がんの患者さんのひどい痛みを抑える目的で使用されています。摂取後1時間以内で発生して72時間以内に自然と治まります。
ヒスタミン誘発頭痛
アレルギー反応として体内で放出されるヒスタミンで痛みが起こることがあります。ヒスタミンが体内で増加することで1時間以内に発生しする即時型と2~12時間で発生する遅延型があります。
カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)誘発頭痛
これの暴露により発生する頭痛にも即時型と遅延型があります。CGRPと言われる物質で片頭痛発作時に三叉神経より分泌されて痛みの原因の一つであることが分かっています。予防薬として注射薬がこの物質の働きを抑えるために、片頭痛発作の予防として有効とされています。
外因性急性昇圧物質による頭痛
下がってしまった血圧を上げるために昇圧薬を使うことがあります。これによって全身の血管に影響がおよぶために頭痛が発生します。
頭痛治療薬以外の使用による頭痛
頭痛治療薬以外の薬で一時的な薬の使用後に急性の有害事象として起こる頭痛です。一時的な頭痛の原因となっている薬剤はアトロピン、ジギタリス、ジスルフィラム、ヒドララジン、イミプラミン、ニコチン、ニフェジピン、ニモジピン、シルデナフィルです。ほとんどの場合、頭痛は鈍痛で持続性、頭全体が痛むものとされます。
治療薬の長期使用による頭痛もあります。これに関連する薬剤としては、蛋白同化ステロイド、アミオダロン、炭酸ナトリウム、ナリジクス酸、甲状腺ホルモン補充療法、テトラサイクリン、ミノサイクリンとされています。長期服用の合併症として認識されています。
その他の物質の使用または暴露による頭痛
医薬品以外にも頭痛の原因となる物質は多いです。例えば消毒薬や殺虫剤といったものが身近にたくさんあると思います。これらに含まれている物質で頭痛の原因になるものは無機化合物と有機化合物があります。無機化合物としてはヒ素、ホウ酸塩、臭素酸塩、塩素酸塩、銅、ヨウ素、鉛、リチウム、水銀、トラゾリン塩酸塩です。有機化合物としては、アニリン、バルサム、カンフル、二硫化炭素、四塩化炭素、クロルデコン、エチレンジアミン四酢酸、ヘプタクロル、硫化水素、ケロシン、長鎖アルコール、メチルアルコール、臭化メチル、ヨードメチル、ナフタリン、有機リン殺虫剤化合物であるパラチオン、パイレスラムなどです。
薬剤使用過多による頭痛 MOH
最初は頭痛に対して飲み始めていた痛み止めが、毎日のように続けて飲んでいることで引き起こされる頭痛です。痛み止めを飲むことがほぼ習慣化していると、薬の効果が弱まることで痛みを感じやすくなったり、頭痛自体を感じやすくなっているので、すぐに頭痛薬や痛み止めを飲んで頭痛を止めるようになります。この状態になっていると薬を飲めば痛みが治まるので、薬が良く効いていると思ってしまっています。病院にかかっているときでも医療者側が漫然と処方を続けているうちになっている場合もあります。この状態が長く続いているほど、治すのにも時間がかかるので注意が必要です。
では、どのような薬でなりやすいかについて紹介いたします。
エルゴタミン乱用頭痛
トリプタン系の片頭痛治療薬が登場する前に主として使用されていた片頭痛治療薬としてエルゴタミン製剤があります。以前より治療薬として使っていて、この薬を1か月のうちに10日以上内服して、頭痛は15日以上ある状態が3か月以上続いているようであれば、MOHであると考えます。エルゴタミン製剤を飲むことをやめられれば、これが原因となっている頭痛は治まります。
トリプタン乱用頭痛
現在片頭痛治療薬としては主流となっているトリプタン系の薬を1か月に10日以上(錠数ではありません)内服していて頭痛は15日以上発生している状態が3か月以上続いている場合はMOHであると考えます。トリプタン系の薬の内服を中止できればこれが原因となっている頭痛は治ります。
非オピオイド系鎮痛薬乱用頭痛
パラセタモール(アセトアミノフェン)およびNSAIDsを頭痛のために1か月のうちに15日以上内服している状態が3か月以上続いている場合にMOHであると考えます。
オピオイド乱用頭痛など
麻薬であるオピオイド系の薬を定期的に使用していて生じたり、複合鎮痛薬(配合されているもので市販薬に多い)や複数の頭痛薬を飲んでいたりすることでも薬物乱用頭痛は生じます。
物質の離脱による頭痛
薬の飲みすぎだけではなくて、普段飲み続けている薬をやめた場合に発生する頭痛もあります。典型的なものは毎日飲んでいるコーヒーを辞めてみた後とか生理痛に悩んでいたので低用量ピルを飲んでいて中止した後とかです。どのようなものが代表的かを紹介いたします。
カフェイン離脱頭痛
カフェインの日常的な摂取を中止すること自体が原因となっている頭痛です。どれくらいかの目安としては1日200㎎を上回るカフェイン摂取が2週間以上あって、摂取するのをやめて24時間以内に発生するものとされます。通常は1週間くらいで自然に治ります。
参考までに厚労省によると健康な成人の一日摂取量は最大400㎎とされており、マグカップのコーヒー約3杯分とのことです。なお、レッドブルだと250ml缶でカフェイン80㎎とのこと。
オピオイド離脱頭痛
麻薬使用をしている方が使用を中止することで生じる頭痛です。3か月を超えて使用していた後に中断し、24時間以内に発生した頭痛の場合でこちらも1週間くらいで自然と治ります。
諸事情で使用している方や治療で使用している方と理由はいろいろですが、長期使用になると生じやすいとされています。
エストロゲン離脱頭痛
3週間以上毎日エストロゲンを内服するなどで摂取していた後に中止することで5日以内に発生する頭痛です。そのままにしていると3日以内に治ります。
いかがでしたでしょうか?
日常生活で身近にある洗剤や飲み物に始まり、あまり接することのないような物質や薬品が出てきましたが頭痛の原因になるものは多くありますので、もしやの時の参考になれば幸いです。
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