感染症による頭痛

その他の頭痛

感染症と頭痛との関係について説明します。

風邪をひいて高熱がでると頭痛がするという経験は皆さん持っていると思います。風邪の原因は細菌やウィルスなどといろいろなのですが、主な特徴としては発熱・せき・鼻水などでしょうか。軽い場合はあまり酷くならずに数日で治まってくるのですが、身体全体へ回ってくると状態は悪くなってきます。そうなってくると頭痛・発熱・悪心嘔吐がみられるようになり、水分や食事が取れなくなるので悪循環になってきます。そうなる前に対処することが必要となりますので、風邪は引き始めが肝心とよく言われます。

高熱が続いたり、細菌が脳へ直接感染して脳自体に影響が出ているときにはさらに意識障害、傾眠傾向、けいれん発作などがみられ、危険な状態になります。脳への影響がみられる場合には他の脳の病気の可能性を検討しつつ、血液検査や髄液検査などで診断をしていきます。

なお、感染症に関連した頭痛が発生した場合に原因となっている感染症が治りきらずに3か月以上続いている場合は慢性とされ、感染は治ったのに頭痛だけがその後も続く場合は持続性といわれ区別しています。

また、感染症が身体のどこで起きていて頭痛がするのかの区別もします。脳や頭の感染症が原因なのか、それとも全身の感染症によるものなのかの区別を行うことで治療方法が違ってくることがあります。

さらに、感染症の原因となっている病原体が細菌によるものなのかウィルスなのか真菌・寄生虫なのかでも区別します。原因の病原体を特定することでこれを直接退治する薬剤が決まってきます。

脳自体の感染症

脳自体に感染が起こっている場合は頭蓋内感染と診断しますが、これにも区別があります。脳の中で膿がたまる膿瘍を作っている場合や脳自体に感染が及んでしまっている脳炎、脳を取り巻く膜へ感染が起こっている髄膜炎の区別を行って治療を進めます。これらの場合はひどい感染症であるために、頭痛が主体というよりは強い神経症状がみられています。その時の症状としては言語障害、聴覚障害、複視、身体の一部の感覚消失、筋力低下、不完全麻痺、幻覚、人格変化、判断力低下、意識障害、記銘力低下、認知症があります。

頭蓋内感染が起こるとほとんどの場合で頭痛を最初に感じます。頭全体が痛む頭痛で始まり、続いて発熱や局所神経症状、性格変化などの精神状態の変化、全身の不調が現れてきます。ここまで進行すると食事が摂れないことや行動がおかしい、トイレへ行けないなどの症状も加わってくるので病院を受診することになると思います。

髄膜炎であれば脳表面に感染が起こっている状態で、髄液を調べて検査をすることで原因となる細菌などが分かってきます。頭痛や発熱に加えて髄膜刺激症状(項部硬直など)がみられます。

脳自体へ感染が広がってくると脳炎を生じます。脳の細胞に感染が起こることからさらに強い症状がでます。感染が及んだ神経に障害が起こるのでどの部分に感染が起こるかで症状が決まってきます。さらに強い脳浮腫が引き起こされることが多く、けいれん発作を起こることがあるのとひどい場合は意識障害などが発生します。
脳炎を疑う症状としては精神状態の変化(意識障害など)、局所神経学的欠損、けいれん発作などと強い症状が現れます。脳の神経などに感染が起こって障害されてしまうと、脳炎の治療により感染症が治まってもけいれん発作や意識障害などの後遺症が残る場合があるのでとても危険です。

脳膿瘍は脳の中に膿がたまる病気です。髄膜炎や脳炎と違って細菌が血液の流れに乗って脳にたどり着いて脳内に感染が起こると発生します。どのようなときに脳膿瘍ができるかというと、重症な全身感染症や心奇形のような心臓に特殊な病気があることが原因となったり、歯科・口腔内の虫歯や慢性中耳炎などの感染がひどくて脳に細菌が広がることが原因となったりします。膿が結構溜まってくると脳浮腫がひどくなって麻痺が生じたりけいれん発作を起こしたりします。診断と治療を兼ねて手術で膿を排液してから抗生物質で治療することになります。

頭痛はインフルエンザや新型コロナウィルスのような全身感染に伴って起こることも多いです。

原因となる細菌など

頭蓋内感染症の原因として細菌やウィルス、真菌・寄生虫があります。何によるものかを診断しないと退治するための薬が決められないので、髄液検査や手術による排液・排膿を行うなどして得られたサンプルから顕微鏡で見ることやPCR検査を行うなどにより調べていきます。

原因となる細菌としては肺炎連鎖球菌、髄膜炎菌、リステリア菌などが多いです。原因となるウィルスはエンテロウイルス、単純ヘルペスウイルス、帯状疱疹ウイルスなどがあります。臓器移植手術後だったりHIV感染症だったりが原因で免疫力が落ちている免疫抑制の状態では様々な原因菌が想定されるのでよく調べる必要があります。

新型コロナウィルスとの関係

新型コロナウィルス感染での主な症状としての頭痛はのどの痛みとともに時折みられるものとされており、頭痛を感じる人の多くは全身性感染症による発熱が原因となった頭痛と考えられます。解熱とともに頭痛は治まってくるようですが、観察期間を過ぎた後でも頭痛や倦怠感が残る場合があります。このような症状が1か月以上続く人の割合は1割くらいのようで、後遺症としての内服治療を行っています。

新型コロナウィルスのワクチン接種後に頭痛が出てくる人もいます。特に片頭痛を持っている人で起こりやすいとされており、しばらく続くのと発熱や倦怠感を一緒に感じることが多いようです。はっきりとした原因はわかっておりませんが、接種後に頭痛が生じる可能性を考えて薬などの準備が必要と思われます。

真菌・寄生虫による感染症

一般的には真菌・寄生虫による全身性の感染症はとても珍しいものですが、がんの治療により免疫が低下していたり、臓器移植により免疫抑制剤を使用していたりすると日和見感染といってこれらに感染する可能性があります。また、HIV感染症の発症や抵抗力の落ちてきている高齢者でも見られます。真菌の種類としてはカンジダやアスベルギルス、クリプトコッカス・ネオフォルマンス、寄生虫としてはトキソプラズマがあります。

いかがでしたでしょうか?
コロナウィルスをはじめ、ウィルスや細菌に感染することは多いのですが、抗生物質などは免疫力の補助的な役割なのでほとんどの場合は身体に備わっている免疫力と体力により回復してきます。しかし、何らかのきっかけで脳への感染が広がって行くと大変なことになり、治療も苦労するだけでなく時には後遺症が残ったり、命を奪われたりする怖い病気でもあります。早めの対処が大切なので、無理をしないでください。

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