脳卒中の場合は一刻を争う場合もあり、緊急性の高い状態頭痛のことがあるので注意が必要です。脳卒中じゃなかったとしても、大きな病気が潜んでいることがあるのでこちらにも注意が必要です。脳の検査を受けることで診断がつくことが多いことから、今回は脳卒中以外の病気で起こる頭痛を紹介いたします。国際頭痛分類第3版(ICDH-3)の非血管性頭蓋内疾患による頭痛の項目を取り上げていきます。
頭蓋内圧亢進性頭痛
脳は頭蓋骨に守られており硬膜という膜で包まれていることから限られた場所に仕舞われている状態にあります。通常であれば、外部からの衝撃より守ってくれているのでありがたいつくりなのですが、脳出血や脳腫瘍などといった病気などで内部に異常が発生し、出血の量が多くなったり腫瘍が大きくなったりすることで脳以外のものの体積が大きくなると頭蓋骨の内側から圧が上がっていきます。ある程度内側の圧が上がってしまうと脳自体を圧迫することになって神経の働きが悪くなってくることにより様々な症状を引き起こします。頭蓋骨の内側にかかっている圧を頭蓋内圧といいますが、通常はある程度の圧の幅で自動的に調整されています。そのために高くなりすぎたり低くなりすぎたりすることも頭痛の原因になります。脳自体には痛みを直接感じないつくりになっているのですが、これを包んでいる硬膜に痛みのセンサーがあるので圧の変化を感じ取って痛みとして異常を知らせてくれます。
頭蓋内圧の変化はしょっちゅう起こっています。例えば寝ている姿勢からから起き上がると頭の位置が変わりますよね。頭の高さが上がると相対的に圧が下がります。さらに心臓との相対的な位置関係も関わっていますし、姿勢を変えたり頭を振っても内部の圧に影響があるのですが、その都度頭痛がしないのは頭蓋内圧の許容されている圧に少し幅があって、自動的に身体の中でこの圧が調整されているためです。この仕組みがうまく働かないくなると頭全体が痛むような頭痛がします。
この頭蓋内圧亢進による頭痛の原因となる病気としては、原因不明である特発性頭蓋内圧亢進(IIH)や代謝・中毒・内分泌に起因するもの、染色体異常や水頭症によるものがあります。
低髄圧症による頭痛
頭を上げると頭蓋内圧が下がるので、特に姿勢によって頭痛がしやすいのがこの低髄圧によるものです。頭を起こしただけで痛くなったり、めまいがしたりするので日常生活ができなくなります。原因がはっきりしているものとしていないものがあり、原因がはっきりしない特発性のものでは脳脊髄液減少症ということでブラッドパッチという特殊な治療が効く場合もあります。ほかには、脳脊髄液検査などで硬膜穿刺による検査を受けた後に発生する硬膜穿刺後頭痛や脳脊髄液漏性、特発性低頭蓋内圧という病気があります。
非感染性炎症性頭蓋内疾患
細菌などの感染がないのに頭の中で感染症のような炎症の変化が起こっており、それが原因で頭痛がします。特殊な病気ではありますが、原因となっている病気を診断したうえでそれに対する治療を必要とします。神経サルコイドーシスや無菌性(非細菌性)髄膜炎、その他の非感染性炎症性頭蓋内疾患によるもの、リンパ球性下垂体炎、脳脊髄液リンパ球増加を伴う一過性頭痛および神経学的欠損症候群(HaNDL)があります。
脳腫瘍による頭痛
脳腫瘍によるものは腫瘍そのものが頭痛の原因である時と腫瘍自体によって起こった脳浮腫によって頭痛が起きている時があります。腫瘍自体が頭痛の原因になる場合は腫瘍の体積がある程度大きくなっていることが多く、早期の手術を要することがあります。どちらの原因であっても頭痛の他にも麻痺などの症状が出ていることが多く、それをきっかけに病院を受診する人もいます。
脳腫瘍の種類は悪性のものと良性のものがあり、さらに悪性のものは脳自体から発生した原発性のものとがんの転移による転移性のものがあります。悪性のものは腫瘍自体が大きくなってくるスピードが早く、それにより引き起こされる脳浮腫も強いことが多いので、これらが原因となって頭痛が起こります。良性の腫瘍はゆっくりとした増え方であるために、頭痛によって発見・診断されるとかなりの大きさになっています。あまり大きい場合には頭痛以外にも麻痺の出現やけいれん発作を起こしていることがあるので、早期に手術による摘出が検討されます。
治療方法としては開頭手術にて腫瘍を摘出する場合とガンマナイフなどの放射線治療を行う場合があります。原発性の悪性腫瘍が疑われる場合は手術で可能か限り摘出することが基本で、手術の結果がその後の経過に重要であることと腫瘍の種類によっては手術の後で行う化学療法で使用する薬が決まってくることもあるため、しっかりとした診断をつけることが必要です。一方、診断されたときの頭部検査画像で脳内に複数個の比較的形が丸くてはっきりとした腫瘍であればがんによる転移性腫瘍の可能性が高いために放射線治療が選択されます。放射線治療は開頭手術と違って全身麻酔を必要とせず、手術による身体への負担が少なく治療が進められることから一般的に行われるようになりました。どの様な種類の腫瘍であるかによって治療適応が決まりますが、転移性脳腫瘍に限らず良性の腫瘍にもガンマナイフ治療などの放射線治療が有効であることが多く最近ではよく行われています。
腫瘍が原因で生じる頭痛の中で厄介なのはがん性髄膜炎によるものです。これはがんからの転移が脳脊髄液を介して脳の表面に広がった状態であって重症です。全脳照射などの放射線治療が主体となり、効果が表れてくると頭痛が治まります。
下垂体腫瘍が原因でホルモンの調整がおかしくなってしまうことで起こる視床下部あるいは下垂体の内分泌過多または分泌不全によっても頭痛が発生します。この場合はホルモンの異常があるために頭痛だけではなく、体温調節障害や極端なのどの渇き、食欲変化、感情状態などといったほかの症状も一緒に見られます。頭痛の治療を行いつつも元となるホルモン障害や腫瘍に対する治療を行うことで治ってきます。
髄注による頭痛
髄注とは脊髄腔へ注射を行うことで、髄液の流れを調べるための造影剤や髄膜炎などの治療を目的とした薬の注射などがあります。この処置を受けてから4日以内に発生した頭痛のことで2週間程度で治ります。これ以上の期間で続くようであると髄液漏による頭痛の可能性へと変わってきますが、基本的な治療としては水分補給と寝た状態での安静を保つことになります。
てんかん発作による頭痛
けいれん発作を繰り返して生じる病気がてんかんと診断されます。けいれんは手足が震える発作だけではなくて意識を失ってしまうものや行動がおかしくなってしまうものなどいろいろな種類があるものです。てんかんと診断された人の中には頭痛を生じる場合があり、てんかん発作と同時かその後しばらくして頭痛化する場合をてんかん発作による頭痛と診断します。通常は数時間から3日以内に自然と消失します。
キアリー奇形I型による頭痛
脳自体の大きさに対して頭蓋骨が少し小さい人がいます。脳の働きや成長などには影響してることなく過ごしている人の中でいきんだり咳をするときに酷く頭痛がするようであるとこのキアリー奇形Ⅰ型である場合があります。頭痛の原因になる部分はだいたい決まっていて小脳の一部が大後頭孔という頭蓋骨の部分に挟まるような感じになるためであり、通常はMRI検査にてすぐにわかります。頭痛があまりひどくなければ頭痛の原因になる動作を控える、避けるように気を付けて生活することで様子をみていくことになりますが、頭痛がどんどんひどくなったり、頻度が多くなるようであれば手術にて頭蓋骨の一部を取り除いて広げることで治ります。
いかがでしたでしょうか?
脳卒中以外の頭の病気が原因となって頭痛が起こる場合の説明を行いました。髄液圧の影響で頭痛が生じているのが中心になります。その原因は様々ですが、脳腫瘍やてんかん発作など心配な病気がありますので、注意が必要です。
コメント