精神疾患と頭痛との関係を説明します。
精神病といっても様々な病気があるので、すべての精神病で頭痛になるというわけではありませんが、病気自体が身体の変調を訴えることが多いので頭痛もその一つになります。頭痛外来を受診する方は少ないとされていますが、すぐにわかる病気でないことも多いのでしばらくは通院による頭痛の治療を勧めながら診ていくことになります。治療を勧めるための重要なポイントとしては精神病の一部として頭痛がある場合と精神病を長い間患っていてそのために起こってきた頭痛とがあるので、これらを区別しています。
国際頭痛分類ではっきりと原因として分類されている精神病は2つで、身体化障害による頭痛と精神病性障害による頭痛です。その他のものとしてはいくつもの疾患が挙げられておりますが、頭痛との因果関係のエビデンスが不十分にて付録(Appendix)として分類されています。その疾患とはうつ病によるもの、分離不安・分離不安症によるもの、パニック障害によるもの、限局性不安症、社交不安障害、全般不安症、外的障害による(PTSD)頭痛です。どれも名前を聞くと頭痛と関連してそうだなと思うかもしれません。
身体化障害による頭痛
身体化障害では頭痛だけではなく腹痛や易疲労感などの多くの苦痛的な症状の組み合わせとそれらの症状やこれらに伴う健康への懸念に対して、過剰または不適切な反応していることが病気の特徴です。ガイドラインでは30歳以前に始まった多数の身体的愁訴の病歴で既知の内科的疾患によって完全には説明できなかったり、あるいは関係する内科的疾患があったとしても病歴、身体診察所見、または臨床検査結果ではそこまで異常であると予想されるレベルをはるかに超えている訴えをします。説明しても理解してもらえなかったり、納得されないような場合も多くて診察を進めていくのが困難なこともあります。
精神病性障害による頭痛
精神病性障害による頭痛では、頭痛の原因とする内容の妄想の症状です。たとえば、宇宙人に装置を頭に埋め込まれているので頭痛がすると主張し、検査によってもそのようなものを否定されても頭痛を引き起こしている原因だと信じ込んでいるような場合です。
診断や治療については基本的に精神科または心療内科との協力の下で頭痛の治療を進める必要があります。しかし、このような病気は診断に至るまでに結構時間がかかります。また、いきなり心療内科などの受診を進めると患者さん自身はその必要はないと拒否されることがあるために、少しずつ進めていく必要もあります。その診療を進めていく中でも外来でよく聞く質問があります。それは食欲はあるかどうか、睡眠はしっかり取れているか、出勤・登校はできているかです。また、この一か月間で気分が沈んだり、抑うつな気分になったりすることがあったかや物事に対して興味がわかないあるいは心から楽しめない感じがよくあったかなども聞いています。これらなどを確認しつつうつ病などの精神疾患が潜んでいないかを確認しています。頭痛に限らずいろいろな症状を執拗に訴えたり、感情的に訴えてくる人やこれまでに様々な症状の訴えから複数の診療科を受診している人もいます。片頭痛の予防療法や薬物乱用頭痛に対しての抗うつ薬による治療以外での抗うつ薬の効果については3-6か月の間は続けて内服してもらってその効果を評価していくこととなります。
精神状態が悪化すると頭痛もひどくなります。
共存する精神疾患は頭痛の回数が増えたり、痛みを強く感じたり、薬が効きづらくなったりと頭痛を悪化させます。心理的な環境をいい状態に保つことも頭痛の治療には重要です。それもあって、抑うつ障害や不安症のような高頻度に共存する精神疾患の症状について、すべての頭痛患者に問診することが推奨されています。精神疾患が頭痛症状の原因と疑われる場合、経験豊富な精神科医や心療内科医、臨床心理士による評価が推奨されているので、その際はよく相談に乗ってもらうことを勧めています。
子供の場合はさらに睡眠障害、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、外交不安症(学校恐怖症)、注意欠陥・た同省(ADHD)、素行症・学習症、遺尿症、遺糞症とチック症は小児頭痛の支障度と予後への負の影響を考慮して注意深く見つけ出していく必要が言われています。そして、それらが見つかった場合は適切に治療されなくてはならないことから、より専門的な治療の介入が必要となります。
片頭痛とストレス
片頭痛とストレスには高い関連性があります。片頭痛発作自体がひどい頭痛でまた寝込むことになるとか仕事にならない、外出できないなどといった心理的ストレスとしても機能することが多く切り離せない関係といえるでしょう。特に片頭痛で困っている患者さんの多くは、この心理的ストレスによっても片頭痛発作が誘発されることを自覚しています。このストレスによりさらに頭痛が引き起こされてくるといった頭痛とストレスとの間には双方向性の関係性があります。さらに、頭痛が慢性化してくると発作が起こること自体が不安のもととなって心理的ストレスとなり、ますます頭痛が悪化するという悪循環が形成されてきます。
しかし、この場合を含むストレスは仕方がないものとして十分な対応ができていないことがほとんどであって治療にも苦戦します。そこで心理的ストレスへの対応としては、過剰なストレスを避けるとともに積極的な発散が重要とされます。セロトニンを増やすことを意識するのも良さそうです。
認知行動療法も有効とされています。これは人のストレス(出来事)からそれにより生じる症状、感情、行動、思考(認知)といった一連のつながりに焦点を当て、「心の持ち方」をポジティブな方向に変えることを目指す心理療法であります。これを意識してポジティブ思考へのトレーニングを行いストレスを軽減していきます。これとともに薬物療法、運動療法と組み合わせて行うことでさらにストレスを低下させていき、生活の質の向上や痛みの軽減に効果が得られます。
COVID-19でのストレスと頭痛について
COVID-19の流行中にも感染したのではないのに1-2割の人で新たに頭痛が発生したとされます。頭痛のタイプは拍動性や圧迫感が主体もので痛むのは側頭部や後頭部が多いとのことです。明らかな原因はわかっていませんが、エッセンシャルワーカーで多かったり、収入が減ったり人付き合いが減ったりなどのストレスや不安感、睡眠不足との関係がいわれています。コロナ禍での片頭痛の悪化も報告されており、ロックダウンなどの影響でそれまでは片頭痛が落ち着いていた人でも再度片頭痛発作が出現したり、痛みの強さや発作の頻度が多くなったりしており、コロナ禍でのストレスとの関係が指摘されています。
いかがでしたでしょうか?
ストレスなどを含めて精神・心理状態がどうであるかも頭痛には特に関係があることから精神の病気が潜んでいるのか一時的な気分の落ち込みなのかといった判断はしばらくの間は外来での診察を通じて診ていくことになりますので焦らずにじっくりと取り組んでいきましょう。
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